童話 【香木は見ていた】
🌸お子様への読み聞かせ童話🌸
ここは、アメリカインディアンの聖地。
見渡す限りの荒野。こんな場所でもさまざまな生き物が活動しています。
今日はあなたに楽しいお話をいたしましょう。
ある男の子が、祈りを捧げていました。亡くなったお父さんが教えてくれた
いい香りのする木の前で。
「ボクの家族が幸せでありますように。」
閉じていた目を開けると木の間に何かが動いています。
「うわぁ!大きなトカゲだ。」
彼はトカゲをつかんで家に帰りました。
「トカゲくん、ボクの友達になってね。」
男の子は木の皮で編んだカゴの中にトカゲを入れました。
カミキリムシは「トカゲくん、ここは君のいる場所じゃないよ。」
コガネムシは今にも息切れしそうな声で「なんとかここを出ていきたい…」
カメムシは「ぼくは、もうここで死ぬんだ…」
トカゲはその様子を見て胸を痛めました。なぜなら、弱っていく虫たちの姿がそこにあったからです。
夜、男の子が寝静まった時、トカゲはカミキリムシを脱走をくわだてました。
「みんなをもう一度、広い世界にもどしてあげる!」
太いあごを持ったトカゲはかごを嚙みちぎり、カミキリムシがコガネムシとカメムシを連れ出しました。
そうしてトカゲは一度ゆっくり目を閉じると、ふぅと息を吐きました。
大きな丸い目を見開いたトカゲは、暗く広がる世界へ走っていきました。
残された虫たちはそれぞれ好きなところへ飛んでいきました。
おしまい。
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